総務歴25年の私が初めて「退職代行」からの電話を受けた日のこと

地方の小さな会社で総務をやっております、健太郎と申します。今年で55歳になりました。子どもたちはそれぞれ独立して、いまは家内と二人、静かな毎日を送っております。

今日は去年の春に職場であった出来事について書いてみようと思います。総務という仕事を長くやってきて、あれほど考えさせられたことはなかったものでしてね。

ある朝かかってきた一本の電話

始業してすぐのことでした。代表番号に「退職代行」を名乗る方から電話が入りまして、入社3年目の若手社員が本日付で退職の意思を示している、今後の連絡はこちらを通してほしい、という内容だったんですよ。

言葉では聞いたことがありましたが、自分の会社で実際に起きたのは初めてでした。正直に申し上げると、最初に湧いたのは戸惑いと、少しばかりの腹立たしさでしたね。「辞めるなら一言くらい自分で言えばいいのに」と。私らの世代は、退職の挨拶も引き継ぎも自分でやるのが当たり前だと思って働いてきましたから。

手続きを進めるうちに見えてきたこと

ところが、総務として書類を整えていくうちに、だんだん気持ちが変わってきたんです。

その社員の勤怠を確認してみると、有休がほとんど手つかずで残っていました。所属部署の残業記録も、どうも実態と合っていないように見える。本人が上司に「辞めたい」と切り出せなかった理由が、書類の数字から少しずつ浮かび上がってきたんですよ。

本来なら、有休を気兼ねなく取らせることも、残業を正しくつけさせることも、会社の側がきちんとやるべき話です。それができていない職場で、若い人に「自分の口で言え」と求めるのは、少し酷だったのかもしれないと思うようになりました。

家内のひとことが胸に残って

その晩、家内にこの話をしましたら、「うちの子が同じ立場だったら、あなたどう思う?」と聞かれましてね。息子も社会人になって数年経ちます。もし息子が職場で追い詰められていて、それでも辞めると言い出せずにいたら。そう考えると、あの若手社員を責める気持ちはすっかりしぼんでしまいました。

同じように考えを変えた人の話を読んで

それからしばらくして、自分の気持ちを整理したくて、退職代行について書かれた文章をいくつか読んでみたんです。その中で印象に残ったのが、転職を2回経験した方が退職代行に否定的だった考えを改めた経緯をつづった記事でした。

「退職くらい自分でやるべき」と思っていた方が、仕事を辞めることにどれだけエネルギーがいるか、そして有休や残業代の問題は本来会社側の責任ではないか、と書かれていましてね。辞める側の立場で書かれた文章ですが、受け取る側の総務の人間として、読んでいて耳の痛いところが多々ありました。私が書類を眺めながら感じたことを、ちょうど反対側から言葉にしてもらったような気がしたんですよ。

総務として、いま思うこと

あの一件以来、私は退職代行を「逃げ」だとは思わなくなりました。むしろ、会社に言い出せない空気をつくってしまっていた側にも、振り返るべきことがあるのだと感じております。

その後、社長にも相談して、有休の取得状況を毎月確認する仕組みを少しずつ整えはじめました。大きな改革というほどのものではありませんが、55歳の総務にできることを地道にやっていこうと思っております。

もし今、職場で辞めたいと言い出せずに一人で抱えている方がいたら、自分をすり減らしてしまう前に、頼れる手段を頼っていいんだと思いますよ。受け取る側の人間が言うのも妙な話ですが、それが今の私の正直な気持ちでしてね。

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